世界中が開発を競い合っているAI。そのAIを新たなレベルに突入させる話題のGANテクノロジーを簡単に紹介。
INDEX
- AIに急成長をもたらす注目の新技術
- 機械学習 vs ディープラーニング
- GANは何がすごいの?
- どう使われるの?
- まとめ
AIに急成長をもたらす注目の新技術
近年進化の著しいAIの領域。その進化のスピードを加速させるとして、今注目を集めているのがGANテクノロジーだ。GANはGenerative Adversarial Networksの略で、日本語では、敵対生成ネットワークと呼ばれる。
名前だけ聞くと小難しそうなので、ここでは、例を用いてなるべくわかりやすく書いていく。まずはGAN以外の既存の機械学習やディープラーニングを、比較のために、簡単に説明する。
機械学習 と ディープラーニング
まずAIの機械学習では、AIにはなるべく多くの事例を学ばせないとなかなか賢くならない。例えば、猫の写真を 見分けるAIを作ろうとする。その場合、機械学習では、人間がこれは猫だよ。この耳とひげ、目が特徴だよ。などと一つ一つ特徴を指定して教える。そして答え合わせを確認してあげる。これを繰り返すことにより、AIが学習し、その写真が猫かどうか判別する精度が上がっていく。
それに対して、ディープラーニングは、機械学習のうちの一つなのだが、人が教えずとも自分で特徴点を学び、見出し、精度を高めることができる。この時点で、かなり賢いが、依然、人が学ぶ対象となる例や問題集を大量に用意してあげる必要がある。さながら一から十まで横で見て、教えてあげないとできない小さい子供が機械学習だとするのであれば、問題集だけ与えれば、自分できちんと勉強できる成長した青年をディープラーニングと言えるかもしれない。
GANは何がすごいの?
これに対してGANは、自分でその問題すら用意してしまう。ではどのように与えられていない問題(サンプル)を作り出すのか?
先程の猫の写真を区別するAIを例にすると、GANは最初にオリジナルの正解情報を少し教えるとその後は自分で、元々の猫の画像を牙をつけたり、耳を尖らせたりするなど、少し加工したものを作る。
そしてそれが猫と言えるのかどうかを判定し、その結果を自分にフィードバックすることで、さらに難しい問題を作っていくというイタチごっこを自分で行う。
これはよく偽札を作る犯罪者とそれを取り締まる警察に例えられる。この犯罪者役と警察役を一人二役でこなし、どんどん精巧な偽札を作りながら、それを見破られるように進化するのだ。
今までAIは、学習させるまでの手間や、その膨大なデータを用意するのに課題があった。このGANは、それを克服できる大きな可能性を秘めた技術ということになる。
どう使われるの?
具体的にはどんなことに使われているのか?
実際しない偽物の高画質画像の作成(下記動画参照)など、色々な使い方があるが、その他にもアメリカの保険会社の営業に活用されている事例もある。
成約確率の高い優良顧客候補を見つけるために、AIを用いたスクリーニング(選別)を導入したかったのだが、機械学習に大きな課題があった。人の手で大量のサンプルの準備と学習補助が必要かつ、近年の個人情報保護の観点から、実際の顧客情報などを取扱や収集が難しかったのだ。
そこでこのGANを使うと、少ないリアルの顧客候補情報と優良候補の特徴から、AIが自分でダミーの類似顧客情報を作り出し、学習を進めていく。大量のリアルの個人情報がなくとも、精度を上げていくことができるのだ。これによりいざ顧客のデータが、入力されると、AIが精度高くその顧客への最も成約率の高い可能性がある商品(言い換えるとその人が必要とするであろう商品)を瞬時に判別することが可能になる。
このように今まで、学習の手間、大量のサンプル用意などの壁があり、AIを導入できなかった分野が多くあったが、このGANは、その課題を解決し、AI浸透を大きく前に進める手助けをしてくれる。
まとめ
GANには、従来のAIの課題を解決できる可能性がある。しかし同時にまだ研究段階であり、作ったダミーを正誤は判断する基準の曖昧さや、問題作成の過程で目的とは異なる方向に偏ってしまうことがあるなど課題も多い。
またこれらの技術を悪用して、偽物の証拠写真や映像なども、最も簡単に作ることができるため、使い方や普及に関しては、今後、注意と良心が必要である。
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